なぜ、生きる?

悩み、苦しみ、生きづらさを抱える皆さんと共に 移住や転職、不登校、大好きな本についても綴っていきます。日常のなかでのふとした学びや気付き、ココロの栄養のキッカケになれれば幸いです 

52才妻子持ち、転職☓☓回、未だに無職… どうする、俺? #11 ー似た者同士?ー


徒歩数分の帰り道。24時間営業のチェーン店

の牛丼屋には客がチラホラ

「なんで、この時間に?」はお互い様か

 

翌朝午前6時、かなり眠かったが雨戸を

とりあえず開けて起きたフリをする。

朝日が柔らかく差し込んでくる、そよ風のお供を連れて

 

二日酔い気味かつ寝不足で布団の上で微睡む

「なんて気持ちがいいんだ」、富山に帰ったら

待ち受けてるであろう、極めて現実的かつ

切実な問題もどこかにいってしまった。

 

「お願いだ、しばし、このままで」

 

 

「お兄ちゃん起きてる?」

階下で母の声が聞こえた、現実や社会の

一歩手前の「リアル」に引き戻される。

 

母はアーモンドミルクを牛乳で伸ばした

きのこ入り、野菜たっぷりのスープを

作ってくれた。

 

 

「ビタミン◯◯がたっぷりで、健康にもいいし

お母さん毎日これ作ってるのよ〜、

どう美味しいでしょ?これに味噌を大さじ

一杯、その場で溶いて付け足すのが、またいいでしょ、これ私のオリジナルね」

 

母は多分気がついていない、「言葉」は耳から入っても脳に半分も引っかからずに

反対側の耳から抜け出している

 

僕が唯一、何も洩れなく自身の官能で感る

モノそれは、あなたからの僕への愛情

 

それをそのまま、お返しする

「ウン、美味い。体中にエネルギーが行き渡るよ」

 

無邪気に笑う母の顔、

自分の身勝手な性格から出た一抹の罪悪感を

全部自分で引き受け、スープ皿を平らげる。

 

「今、お茶いれるね」

しばらくして、テーブルの上に二つの湯呑が置かれる。

お互いの「自分の分」だ。

 

ルイボス茶だった、年をとって味覚が少し

変わった僕には、その苦味を味わうだけの

余裕が備わったという事か

 

母はまくし立てる、近くの総合体育館に

定期的に筋トレに通っている事、

今のボーイフレンドは性的や金銭的な

野心はなく、山歩きをしたり、話相手に

なってもらったりしてくれていれる事、

山に向かって二駅先の近くにある

神社がとても気に入ってる事etc…

 

少し、一人で考え事をしたかったので

「ごめんお母さん、せっかく今東京にいるんだし、〇〇公園でも

散歩してきていいかな?」

と話頭を転じた。

 

母はほんの僅かに背筋を戻し、平然と

「どうぞ、どうぞ、ご自由に」と返した。

 

ひとまず、母子の会話をおひらきに持ち込み

僕は件の公園へ車で出かける。

 

懐かしい公園の近くで車を停め、

アリの巣を探すために生け垣を形成する

かなり大きめの石を引っくり返していた

40年以上も前の記憶に辿り着いた。

 

小学校の中学年、僕は昆虫に魅了されていた。

「昆虫」の定義は今でも諳んじことができる。

完全変態や不完全変態も含めて。

 

昆虫の中でもとりわけ、アリとハチの世界に

のめりこんだ。女王バチを頂点に働きバチ

(アリ)は全てメスだ。

オスは交尾の季節にだけ、

突然変異のようにポッと現れ、役割を終えたら

とっとと消えてゆく儚い存在だ。

 

ライオンの世界でも実際狩りをするのは、メスだけらしい

「なんともまあ、羨ましいご身分だこと」なんてうそぶいても

 

「お前も似たようなもんだろ」

どっかからそんな声が聞こえた。

 

今の自分もかなり、その「ご身分」に近い、

それが、いつまで続くかは正直分からない

 

ただ、今はどうしても、自分なりに

やり切らなきゃ気が済まない事がある。