52才妻子持ち、転職☓☓回、未だに無職… どうする、俺? #3 ービル・バックナーよ永遠にー
僕はその夜この記事を何遍も読み返しました
レッドソックスは3勝2敗で優勝に王手をかけていた。試合は延長戦にもつれ込み、10回表にレッドソックスは2点を挙げて、メッツを突き放した。この裏を抑えればレッドソックスの優勝が決まる。10回裏も2死になった。ところがメッツはここから反撃を見せる。3連続ヒットで1点を奪うと、さらにワイルドピッチで同点に追いついた。
2死2塁。次打者ウィルソンは、低めの変化球を打ち損じ、打球は一塁手ビル・バックナーの前に転がった。何の変哲もない緩いゴロだった。これで延長11回に続くと誰も思
った瞬間。バックナーは足をもつれさせゴロをトンネルした。二塁走者が一気に生還し、メッツは土壇場でサヨナラ勝利を収めた。
バックナーのサヨナラエラーで3勝3敗となり、優勝の行方はわからなくなった。
池田が見ていたスポーツニュースは、バックナーのエラーの瞬間を映し出した。球場は騒然となっていた。そして試合後のバックナーのコメントが紹介された。
「これが私の人生です。このエラーを自分の人生の糧にしたい」
池田も自分の経験を話した。あの転倒のあと、理不尽で激しいバッシングを受けた、と。バックナーの表情がいっそう真剣になり、目が鋭く光った。
「イケダ、人生にエラーはつきものだ。大事なことはそのあとをどう生きるかだ。たかが野球、ゲームじゃないか。長い目で見るとつらいことのほうが大きな意味を持つんだ。あのエラーがあったから、今の人生があるといえるよ」