なぜ、生きる?

悩み、苦しみ、生きづらさを抱える皆さんと共に 移住や転職、不登校、大好きな本についても綴っていきます。日常のなかでのふとした学びや気付き、ココロの栄養のキッカケになれれば幸いです 

52才妻子持ち、転職☓☓回、未だに無職… どうする、俺? #19


ゴンコン

朝、俺の部屋の扉からノックの音がした。

その両開きの木製の建具は、隣町にあるこの国でも珍しい

大工養成の専門学校の先生に図々しく、必死で教えを請うて

自分で自作したものだ。

 

でも、素人の限界か加工も乾燥もちょっと甘かったから

こんな、間抜けな音をたてる。

 

「◯◯ちゃん(俺の下の名前の始めの二文字どういう訳か妻はいまでもそう呼ぶ)

◯◯(長男の名前)を駅まで送ってって!」

 

この体たらくな状況では、頼み事であれ、妻が俺に話しかけてくれるのが、

とても嬉しい。

 

「この風で、列車止まってるかもしれないから、ちゃんとネットで調べてね」

 

妻の予言通り、どうやら列車は運休のようだ。でもこれにかこつけて

息子と色々話しをしてみようと思ったし、

 

ついさっきまでお世話になってた会社に対して

ちゃんと縁を切るために外出する、いいきっかけにできそうだ。

 

授業開始の時間をリビングに貼りだしてあるプリントから確認して、

おおまかな出発時間をまだベッドでうつらうつらしている息子に伝える。

 

不登校状態から抜け出して、なんとか高校に通っている

息子にあまり将来の進路のことを問い詰めたりしたくなかったけど…

 

富山駅のすぐ近くにある高校に車で向かっている

最中こんな言葉が思わず漏れ出てしまった。

 

「なあ、〇〇将来どんな仕事に就きたい?」

少し間を置いて「う〜ん、わかんない」

「はは、〇〇は正直だな、まあでも、今は俺も似たようなもんだからな」

 

みたいな呑気な会話をする。

そして、息子を降ろし、少し後ろ姿を見送って、元の会社に向かう

挨拶のお菓子を購入して(前の前の会社とおなじヤツ)予め来訪の時間を

電話で伝え、時間通りに正門をくぐる。

 

偶然かどうか、入社時に面接をしてくれた、社長さんがいてくれた。

応接室で二人きり、正直な自分の心境を話したけど、

こんな状況に陥ってしまったのは自分の中のもっと根深い部分が原因だ。

 

それが異性間であれ、会社と被雇用者間であれ、別れ話には変わりがない。

そんなに盛り上がるわけでもなく、

事務的なノリで話を進む、宅配便の業者が来たタイミングで

最後の挨拶をして、会社を後にする。

 

でも一応ちゃんとケジメをつけられた。そんな事でさえ今の自分には

ハードルが高かった。

 

「やった‼、ちゃんと縁を切った、これで前に進める」

身勝手といえば身勝手な言い分だ

 

どんなに内面的、精神的な意味で切実な理由があっても、相手がいる以上

約束を守れなかった報いは当然うけなけらばならない。

 

自分がこれまで繰り返してしまった事

そして、こらからも起こり得るかもしれない事

 

なかなか、身動きがとれない

そんな日々がこれからもしばらく続きそうだ。